「スマホ・ゲームは目に悪い」説、意外に「そうでもない」ことが判明 「やりすぎは近視のもと」は本当なのか?

 

本日は、近業またはスマホやテレビと近視の関係について参考になりそうな記事をご紹介いたします。

 

「スマホ・ゲームは目に悪い」説、意外に「そうでもない」ことが判明 「やりすぎは近視のもと」は本当なのか?

「目に悪いから規制を」という声もあるが…

新型コロナの流行で学校が休校になった際、子どもが家にいることが多くなり、任天堂のゲーム機「Switch」の売り切れなどがニュースになった。

子どもがゲームをする時間が増えると、保護者・親としてはいろいろな心配事が出てくる。その一つがゲームは目に悪いのではないか、というものではないだろうか。

ゲームが目に悪い、近視の原因といった話は誰でも聞いたことがあるはずだ。先日、大学で子育てについての授業をしたときに、「子どものころに禁止されていたもの」についてアンケートをしたところ、アニメ『クレヨンしんちゃん』とテレビゲームという回答が圧倒的に多かった。ゲームの禁止理由には「目に悪いから」というものが含まれており、世の保護者・親御さんにとっては、ある意味あたりまえの認識になっているのだろう。

先ごろ、スマホやゲームの時間規制を盛り込んだことで大きな問題となった香川県「ネット・ゲーム依存症対策条例」の前文でも、ゲームと視力についての指摘があった。

条例では、「インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用は、子どもの学力や体力の低下のみならずひきこもりや睡眠障害、視力障害などの身体的な問題まで引き起こす」と書いており、スマホやゲームによって目が悪くなることが、条例の立法根拠の一つとされているのである。立法の根拠にエビデンスがあるか否かは重要であり、もしエビデンスがなければ間違った認識の下に条例が作成されたことになる。

香川県よりもさらにラディカルなのが、中国である。中国国営の新華社通信は共産党総書記で国家主席の習近平氏にとって「わが国の若者の視力の健康は常に大きな関心事である」と書き、2018年からゲームの流通量を制限する政策を始めたと報じている。

このような世界の動きを見ていると、これほど「スマホやゲームは目に悪い」という説によって政治的決定がされているのだから、その科学的な裏付けがあるに違いないと思ってしまうが、意外にそうでもないのである。

実は、エビデンスはなかった

小児眼科医であり、アメリカ眼科学会の広報担当であるアーロン・ミラーはワシントン・ポストの取材に対して、ゲームを排除する中国政府の姿勢を「極端なスタンス」であるとしたうえで、「ゲームやテレビなどでスクリーンを観ている時間と近視には直接的な相関関係や明確な因果関係はない」とコメントしている。BBCでは「ゲームが目に悪いって誰が言っているの?」という少々煽りの入った記事も掲載されている。英米のメディアは「ゲームは目に悪い」という認識を否定する傾向にあり、眼科の専門家たちもそれを支持しているのだ。

アメリカ眼科学会の見解が分かった時点で、ゲームと視力に関する研究の動向は予想がつくだろう。実際に出版されている研究論文でも、スマホやゲームによって近視が引き起こされるというエビデンスはほとんどない。そういったエビデンスを確認することは香川県の条例の立法根拠がないことや、中国の政策が間違いであることを指摘するのに意義があるだろう。

しかし、それ以上に生活習慣やデジタルデバイスの使い方について考えるいい機会になり、パソコンの前で仕事をすることが多い筆者自身も生活を見直すことを考えるようになった。デジタルデバイスを長時間使い続けるのは、目に負担をかけるのは間違いないが、それ以上に、休憩の取り方、姿勢、画面との距離などの影響が大きい。

最近、自宅でのリモートワーク勤務をする人が増えたが、誰もが書斎を持っているわけではなく、立ったままであったり、ソファやベッドで作業をせざるを得ない人もいるという。環境が整っていない中で長時間の作業をすると、眼精疲労や身体の疲労の原因となる。

また、近視という点ではリスクが高いのは未成年である。子どもを持つ家庭では、ゲームよりも、近視のリスクの高いものはあり、子どもの環境を整えていくことが課題となっているが、ほとんどの家庭では顧みられていないように思われる。

近視増加の原因は「大いなる謎」

近視の最も大きな原因は遺伝である。このことは科学的研究でも強く支持されている。しかし、遺伝が原因であれば、近視の有病率、つまり近視の人は一定数で変化しないはずである。

実際には、日本では近視の人は近年増加しているし、世界をみても、近視の増加が報告されている。中国や韓国をはじめ、東アジアでも大きな社会問題になっている。近視は社会的な関心が高く熱心に研究されているが、増加の根本的な原因がほとんど分かっていない、大きな謎なのだ。

その中で、近視の原因として強く疑われているのが、「近業(Near-Work)」である。読書や勉強など近くを見る作業のことを指し、スクリーンとの距離が近い携帯ゲーム機やスマホも含まれる。定義によっては数メートル離れたテレビ視聴、テレビに接続する据え置き型のゲームが含まれることもある。

近業が近視に関与していることを示唆する報告は存在している。法学部生や医学生などの高学歴集団では、近視の有病率は80%を超えるという報告がある。また、顕微鏡の職業的使用をする検査技師は成人になってからも業務のために近視になったり、それが悪化するということも報告されている。

長らく検証されてきたのは、勉強時間の増大によって近視になる人が増えたという仮説だった。そこへゲームやスマホといったトピックが加わったのは、最近のことである。これらも近業には違いないため、疑う理由は十分にある。しかし意外なことに、近業と近視の関係に否定的な研究は多く、ゲームとの関連は否定されている。

近業と近視の関係を調査した研究結果は割れている。例えばオーストラリアの研究では、連続読書時間が30分以上の子どもは1.5倍近視になりやすい、中国の研究では、10時間以上勉強すると1.43倍近視になりやすいと報告されている。一方でシンガポールの研究では、近業と近視の進行には関連がみられない。近視の子どもたちが都市部に多いことに着目した中国広東省の農村部と都市の比較研究では、人口密度が高いほど近視リスクと関連していることは確認されたが、勉強時間、屋外で過ごす時間、家族の教育レベル、経済発展と近視は関連がみられていない。

発表されている研究データをすべて合わせたうえで分析するメタアナリシスという方法では、近業と近視に関連がみられたが、テレビ視聴、ゲームとは関連がないとされている。

日本では、学校で行われている健康診断のデータ(1979年から2012年)に基づく大規模データ分析がなされており、その結果、テレビゲームの時間や学習時間は視力不良と関係がなかった、と報告されている。

従って、現在までの研究を総合して判断すると、読書や勉強といった近業はリスクとして十分に考えられるが、テレビ視聴やゲームプレイにはリスクがないというものになる。

むしろ「ゲームで視力回復」することも

「目に悪い」というイメージで責められることも多いゲームだが、ゲームによって視力が回復したという報告もある。動きのあるアクションゲームのプレイによって、視力の一要素である「コントラスト感度」が改善したとの報告がある。アクションゲームをしていると反応が早くなり、間違いが少なくなるといった報告もある。こちらは視力のみならず脳機能の上昇であるが、次々と敵が出てくるようなゲームだと、早く正確に対処する必要があるため、脳の一部の能力が鍛えられるのではないかと思われる。

また最近では、大人がVRを使うことでと視力が回復したという報告が上がっており、今年6月には弱視(メガネやコンタクトで矯正しても1.0以上の視力がでないもの)の治療のためにVRを使用した実験の論文が発表されている。

VRの視力への影響を検討した別の論文では、目とVRスクリーンの間の距離が短いため、一見するとVRは近業であるようにも思えるが、実際には擬似的に遠くのものを見ることになるため、近業にはならないようだ。また、視力が安定している成人は、VRの使用によって近視になることはないともされている。子どもに関してはまだ研究が進んでいないものの、今後この分野では新たな発見が出てくると思われるため、ゲームやVRでの視力向上効果が証明されることが期待される。

「塾通い」と近視のリスク

近業と近視の研究で関連性が指摘されているのが読書と勉強である。

シンガポールでは小学校時代に習熟度別のコースに分かれるが、その中でも勉強ができるコースに入った子どもは近視になりやすく、最終的に学歴と近視には関連がみられたという。台湾では、日本と同じように学校の放課後に塾にいくことが一般的である。塾に通い平日4時間勉強をすると近視になるリスクは20%増加すると報告されている。

先に引用したメタアナリシスでは、欧米よりも東アジアの近視の有病率が高い理由として、親は子供の成績を気にかけ、子どもがそれに応えて一所懸命に勉強することを挙げている。確かに、近視の有病率の高い国である中国の都市部、シンガポール、台湾、韓国、日本などは国際学力比較調査の上位国である。

国際的な学力比較調査の一つ、国際数学・理科教育調査(TIMSS)の2015年調査のトップ5はシンガポール、韓国、台湾、香港、日本であった。この5各国とも近視の有病率が高い国でもあるのは興味深い。学力が高いことは良いことだろうが、私たちは、その代わりに視力を失っているのかもしれない。

「外遊び」が近視を防ぐ

では、読書や勉強を控えても近視を予防することはできないのだろうか。

この20年ほどの研究で明らかになったのは、外で遊ぶ時間・外で過ごす時間が増えると近視が減少するということについては、コンセンサスが取れているということだ。メタアナリシスによると、1週間に屋外で過ごす時間が1時間増えるごとに、近視の有病率のリスクが2%減少するという結果が出ている。

2%というと少ないようにも感じられるが、1週間は168時間あり、そのうちの1時間なので少ないように感じるのであって、例えば1日1時間外にいる時間が増える、つまり1週間に7時間増えると、近視リスクは13%減少する。13%というとなかなかの予防効果である。

「ゲームばかりせずに外で遊びなさい」と保護者や親などに言われた経験がある人も多いだろう。近視予防という観点については、この言葉は正しかったようなのだ。

「鉛筆の持ち方」も近視に影響

近視になる要因は勉強や読書の時間だけではなく、姿勢や読み書きの距離も関係があるとされている。

中国北京で行われた研究によれば、読み書き距離が33cm未満と近いと1.95倍近視になりやすいと報告されている。同じく中国の別の研究では、読み書きの時の頭の傾きが近視と関連しているとしている。のぞき込むような形で勉強をすると1.3倍近視になりやすい。また、ペンと指先の距離が近い子どもは近視になりやすいとも報告されている。ペン先に近いところでペンを持つと上からのぞき込むような姿勢になるため、目にはよくないようだ。

また、メカニズムが不明なためどこまで信用できるのかはわからないが、卓上のライトが白熱灯ではなく蛍光灯の場合に1.5倍近視になりやすいというデータもある。私たちの周囲の照明はLEDに変わっていっているため、LEDの結果を知りたいところだが、普及して間もないことから研究結果は存在していない。

「眼精疲労」も近視と関連なし?

パソコンやスマホを長時間利用している大人は少なくないだろう。リモートワークが推進される中、以前よりもさらに長い時間、パソコンと向き合うようになった人もいるはずである。眼精疲労を感じている人も多いだろう。

近視は小児期から思春期にかけて悪化し、成人になると安定するのが一般的である。大人と子どもでは少し事情が違うのだが、眼精疲労についてとりあげてみたい。

眼精疲労が近視を引き起こすと考えている人もいるだろう。スマホやゲームをして疲れ目になり、それが積み重なっていくと視力が悪くなる、といったイメージが漠然とある。

しかし、実は眼精疲労と近視の関連も認められていない。メタアナリシスによれば、眼精疲労を訴える子どもの大多数に、視力や屈折の異常は認められないことが明らかになっている。

眼精疲労を極度に恐れる必要はない。しかし、決して良い物ではないことも明らかである。

ジャマイカの大学生を対象にしたパソコン利用についての調査では、興味深い結果が出ている。パソコンやタブレットを使ったことによる身体症状は首の痛み(75.1%)、眼精疲労(67%)、肩の痛み(65.5%)、ドライアイ(26.2%)、かすみ目(51.6%)などであった。このような症状が出ることは想像の範囲内だが、パソコンを使ったときの姿勢で結果が大きく違ったのである。

中程度の目のぼやけを訴えた人は、目線から斜め下にノートパソコンを置いて使うようなスタイルの人では14.8%であったのに対し、タブレットなどを手で持って、下から見上げるようにして使う人では52%と多かった。一方、重度の眼精疲労は、パソコンやタブレットを見下ろして使う人の63%でみられたのに対し、目の高さにモニタを置いていた人では21%と少なかった。これらの「姿勢」は、眼精疲労には関連があったが、肩の痛みなど身体の症状には関連がなかったと報告されている。

つまり、スマホであれ、ゲーム機であれ、パソコンであれ、使う姿勢が目に与える影響は少なくないということだ。これは、パソコンを長時間使う仕事をしている人にも示唆のある研究である。ノートパソコンを使う時には、たいていモニタは目線よりも下にあり、見下ろす形で作業することになるし、キーボードを打つ場合には猫背になりがちである。それに比べてデスクトップパソコンは、身体をしっかり保持できる椅子を使うことができ、目線の高さにモニタを置くことができる。デスクトップパソコンの方が目に対する悪影響は少ないのである。

眼精疲労を扱った論文でこれが近視につながる訳ではないにしても、疲労につながるのは間違いなく、健康にパソコンを使うのであれば環境を整えることも必要かもしれない。

インドの11~17歳、576人の思春期の学生を対象とした研究もみてみよう。デジタルデバイスを使用しながら横になる習慣があると、眼精疲労の症状(27%)が高くなる。横になるというのは、寝る前にスマホを使うような状況ではなく、ベッドで寝転がりながら、ウェブサイトやデジタル化された教科書を読んだり、ストリーミングサービスで動画を視聴したりすることである。

先ほどは目線と対象の角度が取り上げられていたが、対象と眼の距離が一定に保たれているかどうかも関係があるようだ。対象と目の距離が揺れることによって、近視が生じていると示唆する研究もある。

ゲームであれば、ごろごろとベッドでもできる携帯ゲーム機よりも、テレビに接続した据え置き型のゲーム機で姿勢を保ちながらプレイするほうが、目に対する悪影響は少ないかもしれない。

さきほどのインドの研究では、対象となった学生たちはタブレットなどを宿題の補助に使うだけではなく、3分の1は従来の紙の教科書の代わりに使い、読書もデジタルデバイスを使用していた。

近年はタブレットで教科書を表示するのみならず、タブレットを使った通信添削サービスなども広く使われており、学習ツールにデジタルデバイスが組み込まれている。新型コロナウィルス流行の影響でオンライン授業が推進される中、全国の学校でタブレットやパソコンを早期に導入する動きも出てきている。今後の学習スタイルを考えるのであれば、目に負担をかけない利用方法でデジタルデバイスと付き合っていく方法を模索していく必要があるだろう。

「ゲーム・スマホ敵視」に根拠はあるか

デジタルデバイスを使用することによる眼精疲労は、デジタル眼精疲労もしくはコンピュータ・ビジョン症候群と呼ばれている。

アメリカの眼科学会である米国オプトメトリック協会は「20-20-20ルール」を推奨している。20-20-20ルールとは、20分ごとに20秒の休憩をとり、20フィート(約6メートル)先のものを見るように心がけるというものだ。

6メートル先というのは日本の家庭では難しいかもしれないが、20分ごとに20秒の休憩はできるだろうし、できるだけ近くのものを見ない、遠くのものを見る時間を作るといったことであれば、ある程度できるだろう。

近代社会では子どもは6歳くらいから学校に通い、毎日数時間の勉強という近業をしなければならない。日本では先にみたように学力は世界のトップレベルだが、世界のトップレベルの国々はいずれも子どもの近視で悩んでいる。

香川県の条例のように、近視の原因をゲームに押しつけられればよいのだが、近視の原因はゲームだとはいえないし、そもそも「学校に通い勉強すること」そのものが近視の大きなリスクである。そして研究で判明しているのは、テレビやゲームといった新しいテクノロジーに高いリスクがあるわけではなく、紙の本であったり、鉛筆やペンでの勉強という慣れ親しんだ方法にこそリスクがあるというものだった。

本気で近視の予防を考えるのであれば、ゲームやスマホといった新しいテクノロジーを犯人に仕立てるのを改め、紙での勉強や読書にリスクがあることをもっと認識すべきだろう。その上で、20-20-20ルールを守る、ベッドに寝転がって使わないようにする、読み書きの距離はできる限り話す、鉛筆は筆先近くをも持たない、正しい姿勢が取れる椅子と机を用意する、目線と同じところにモニタや機器を置くといった習慣や環境を調整していく必要があるだろう。

香川県の条例のように「スマホやゲームを規制すれば問題は解決する」という思い込みを規制の形で実行すれば、何かをやった気にはなれるだろう。しかし、真に子どもの健康を守ることにはつながらない。それよりも、スマホやゲーム、そして勉強、読書、テレビなどの近業における適切な使い方を啓蒙することの方が、子どもの健康を守る上では有益であろう。

 

引用:「スマホ・ゲームは目に悪い」説、意外に「そうでもない」ことが判明 「やりすぎは近視のもと」は本当なのか?

livedoor NEWS

 

 

昔からテレビやゲームをし過ぎると眼が悪くなるとよく言われたものですね。今となっては、よく調べもせずに聞き入れていたものです。
今回の記事の内容に限ったことではありませんが、先入観や固定観念で物事を決めつけてしまうことは良くありません。
「みんながこう言っているから」とか、「以前からこうなっているから」という言動は自分に軸がなく、極端ではありますが自分の人生を生きていないとも取れます。現代は様々な情報が溢れかえっている時代ですので、取り入れる情報を選別して、自分で咀嚼することで、自分の意見も生まれますし、取り入れた情報の本質に気付くことができるのではないでしょうか。

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