「最近メガネなしでもよく見える」人が、白内障を疑うべき理由

 

「白内障」という言葉を一度は聞いたことあると思います。
白内障は遅かれ早かれ誰しもが患う可能性があります。

今回は、近視や遠視と白内障の関係について書かれた記事をご紹介いたします。

「最近メガネなしでもよく見える」人が、白内障を疑うべき理由

目の病気として知名度の高い「白内障」。高齢者の病というイメージが強いものの、若い世代でも発症する恐れがあります。正しい知識を身に付け、きちんと備えておくことが重要です。今回は『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、はんがい眼科を受診された方の症状から「近視により発症する」白内障について解説します。

Case4:「近視」によって白内障が発症するケース

【43歳男性のAさん】

小学校3年生頃から-10ジオプターの強度近視で、以来、メガネやコンタクトレンズを使用していた。しかし視力は落ちることもなく、40歳頃まで安定していた(矯正視力は1.0程度を維持していた)。

◆発症時の自覚症状

40歳を超えた頃から、急激に視力の低下を感じるように。毎年メガネを作り替えないといけないほど、近視の度数が進んでいった(-15ジオプターまで進行)。

ある日、家を出るときに妻から「お父さん、スーツのジャケットは紺だけど、ズボンは黒よ。大丈夫なの?」と指摘を受ける。黒と紺など、微妙な色の差がわからなくなっていた。

◆診断・治療

メガネ屋さんから「一度、眼科で診てもらったほうがいい」とアドバイスされ受診。

診断結果は、水晶体の中心部が硬くなる「核白内障」という種類の白内障で、矯正視力は0.7だった。症状が進むと水晶体が硬くなり手術の難易度が上がるので、早めの手術をすすめた。初診から3カ月後の手術により、現在は、1.2の裸眼視力を獲得している。

 

核白内障の特徴

核白内障は、水晶体の中心部(核といいます)が少しずつ硬くなる病気です。

ここで少し詳しく、水晶体についてお話しします。水晶体を包んでいる袋の内側、いちばん表面に近いところには、水晶体上皮細胞がきれいに並んでいます。この細胞が、水晶体の中身である線維細胞を生み出し続けます。

そのため、水晶体の中には線維細胞が年輪のような層になっており、皮質とよばれる部分を形成しています。

皮質は柔らかい組織ですが、加齢とともに線維細胞がどんどん積み重なってくるため、古い細胞が中央に集積します。それが水晶体の「核」とよばれる硬い部分です。一般的には30歳前後から、核が存在するようになるとされています。この核が濁って硬くなるのが核白内障です。

核白内障は進行すると、中心部がまるで石のようにカチカチになります。

この核白内障には、典型的な自覚症状がいくつかあります。早い方で40代(多くは50歳を過ぎた頃)から、少しずつ近視の度数が強くなっていき、毎年メガネやコンタクトレンズの度数を上げることになります。

また遠視の人は、一時的にメガネなしでも遠くのものが見えるようになり、老眼の人は手元がよく見えるようになるケースもあります。

近視の人は白内障が進行しやすい理由

ではどうして、どんどん近視が進んでいくのでしょうか。

それは、水晶体の中心部が硬化することで屈折率が変わることが原因です。水晶体の中心部が硬くなることで、レンズがもう一つ増えたよう状態になり、光を強く屈折します。そのため近視の度数が進んでいくのです。

強度近視の方は核硬化が速く進むため、40代でも核白内障がどんどん進行して近視がさらに強まり、次々とメガネやコンタクトレンズの度数を上げていかねばならなくなるのです。

一方遠視の方は、普段は凸レンズのメガネをかけることで視力を出していますが、40代の方が核白内障になると、厚くなった水晶体がレンズのかわりになって、メガネなしで遠くも手元も見えるようになります。

「最近、メガネやコンタクトレンズがなくてもよく見える!」と喜んでいると、実は背後で核白内障が進行している可能性があるので気をつけてください。

クロード・モネも核白内障だった⁉

もうひとつの核白内障の症状として、微妙な色の違いがわからなくなるということがあります。これは水晶体自体の色が変色することが原因です。

水晶体自体が黄色から褐色へと変色し、色の見え方もゆっくり変化してゆくのです。そのため、黒だと思って履いていた靴下が実は濃紺で、左右違う色の靴下を履いていたということも起こってきます。

実は、印象派を代表する画家、クロード・モネも核白内障を患っていたのではないかといわれています。彼の晩年の作品は、少しずつ赤みを帯びたものに変化していますが、これは彼の水晶体が黄色から茶色へと変化していった結果、彼がキャンバスに着色した色も赤みを帯びたものへと変わっていったのではないでしょうか。

水晶体の変色は、高名な画家の作品にも大きな影響を与えたのです。

手術は「硬くなりすぎる前に」行うべし

白内障の手術では、超音波を用いて水晶体を細かく砕き、吸いとる方法が広く行われています。

核白内障が進行すると、水晶体が、まるで膠(にかわ)のように硬くなってしまうため、水晶体を砕く際に大きなエネルギーが必要になります。

もちろん手術は細心の注意と安全性をもって行われますが、水晶体を砕く際に、高い超音波エネルギーをかけると、角膜を透明に保つために存在している角膜内皮細胞を多く失ってしまう恐れがあります。

この細胞は一度死んでしまうと再生しないため、角膜に濁りが生じてしまうことになりかねません。

また、核が硬くなるほど高い吸引パワーで通常より長い時間操作を続けるため、水晶体の袋が破れる後嚢破損という合併症のリスクが高まります。核白内障の手術は、水晶体が硬くなりすぎる前に受けるのが鉄則です。

また遠視の方は、もともと角膜と水晶体の間の前房(ぜんぼう)と呼ばれる部分が狭い方が多いために、水晶体を超音波で砕く際に、角膜内皮細胞を傷つけてしまう恐れがあるのです。

そのため、遠視の方の核白内障の手術では、熟練の技術が必要です。

白内障手術を受けると「近視・遠視」が治る!

白内障手術により、長年不便に耐えてきた強度の近視も治ってしまいます。朝起きたとき、部屋の壁がすっきり見えるようにできます。遠視の方の遠視も治りますし、乱視も軽くできます。

白内障手術は、レーシックに勝る屈折矯正手術でもあるのです。

さらに、多焦点眼内レンズを用いると老眼もほぼ治すことができますので、四六時中手放せなかったメガネやコンタクトレンズを手放すことができるのです。

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

 

引用:https://slashgear.jp/tech/10419/

幻冬舎 GOLD ONLINE

 

 

こちらの記事の最後にありますように、現代の白内障手術には多焦点眼内レンズなどがありますので、術後にメガネやコンタクトレンズが不要となる場合があります。
まさに、レーシックに勝る屈折矯正手術とも言えます。