失明する可能性が倍増!? WHOは“近視”を「公衆衛生上の危機」に指定…意外と恐い“強度近視”のチェック法
本日は、眼疾患発症のリスクについて学べる記事をご紹介いたします。
失明する可能性が倍増!? WHOは“近視”を「公衆衛生上の危機」に指定…意外と恐い“強度近視”のチェック法
『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』より #1
近視は単に「遠くのものが見えない」というだけではない。視野を狭める病気の発症リスクが、強度の近視である人の方がそうでない人よりも高くなると明らかになったのだ。
ここでは、NHKの番組ディレクターとして『クローズアップ現代』『サイエンスZERO』などを担当した大石寛人氏の著書『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』(NHK出版)より一部を抜粋。強度の近視がもたらす恐るべきリスクについて紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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近視が高める眼病のリスク
近視によって視野が失われる病気のリスクが高まる以外にも、失明を招く様々な眼病のリスクが明らかになってきている。
その代表例は、眼球でレンズの役割を担う水晶体が濁り、視力が低下する「白内障」だ。特に近視の場合には水晶体の中心から濁ってしまう「核白内障」の発症が多いとの報告がある。そして、眼球でスクリーンの役割を担う網膜がはがれ、失明に至る可能性のある「網膜剥離」。それぞれ実際にどのくらいリスクが高まるかについては、いまも研究が続けられているが、参考になる数字がある。疫学研究の結果をまとめた論文によると、強度の近視では、
・緑内障 3.3倍
・白内障 5.5倍
・網膜剥離 21.5倍
という数字が公表されている。
これらの数字は「オッズ比」と呼ばれる統計上の尺度だ。この場合、「強度の近視による様々な病気の発症への“影響の度合い”」を示している。
強度近視が緑内障発症のリスクを高めている
緑内障の例で、もう少し具体的に説明してみよう。緑内障を「発症した」グループ内で、「近視でない人」の数に対する「強度近視の人」の数の割合を計算する。一方、緑内障を「発症していない」グループ内でも同様の割合を算出する。そして、この両方の数値の比をとったものがオッズ比であり、ここでは3.3倍という値だった。
もし、緑内障を「発症した/発症していない」という2つのグループで、「強度近視である/近視ではない」という人数の割合が同じであれば、オッズ比は1倍となる。すなわち、緑内障が発症するかどうかに対して強度近視は特に影響を与えていないようだ、という判断ができる。しかし、この論文では3.3倍という値だった。これはつまり、強度近視であることが緑内障発症のリスクを高めている、と判断できることを意味している。白内障は5.5倍、網膜剥離は21.5倍なので、緑内障よりも、それぞれの病気発症との関係がより深いことがわかる。
さらにもう一つ興味深い点は、この数値は強度の近視だけにとどまらず、中等度、さらに弱度でも1より大きくなるという点だ。
この数値は、非常に示唆に富んだ、メッセージ性の高い研究成果だと私は思う。一つめのメッセージはリスクを示す情報で、「弱度・中等度であっても、近視は失明を招く病気の発症と関係がありそうだ」ということ。そしてもう一つは、対策の大切さを示す情報だ。
つまり、「近視が強度になるにつれて、数値が上がり、発症リスクが高まる可能性がある。たとえ近視になってしまったとしても、その進行を遅らせることは非常に重要だ」ということだ。
近視が進行すればするほど、リスクはさらに高まる
もちろん、近視の人がみんな失明するというわけではなく、数としてはほんの一部だろう。しかし、そのリスクが高まっている可能性があるということ、そして近視が進行すればするほど、そのリスクはさらに高まりそうだということは、ぜひ知っておきたい重要な情報だ。
また、最も近視の対策に効果があると考えられる小学生から高校生までの段階で手を打つことがなぜ重要なのか、という疑問に対する答えの一つがこの数字でもある。
特に緑内障は、日本人の中途(後天的な)失明原因の第1位だ。疫学調査によれば、40歳以上で20人に1人、60歳以上で10人に1人の割合で発症しているというデータもある。
先に述べたように、世界的に見れば眼圧が高まって視神経がダメージを受けるという原因が一般的だが、日本人には正常な眼圧値でも緑内障を発症する「正常眼圧緑内障」が多いという報告もある。その原因はまだわかっていないが、その中には眼軸長の伸びが一因となり、緑内障を発症しているケースが含まれていることは間違いないだろう。
リスクの高い「強度近視」をチェックする
日本近視学会では、強度近視を屈折度数マイナス6.0D(ジオプトリー)より進んだ近視と定義している。
屈折度数とは、いわば「網膜よりもどれくらい手前で焦点が合っているか」を示す数字で、この数字がマイナスであれば手前(つまり近視)に、プラスであれば奥(つまり遠視)であることを示している。値が小さければ小さいほど、焦点が網膜から手前にずれており、近視が強度になっていることを意味する。
強度近視は合併症のリスクが高く、特に注意が必要だが、簡易的にいますぐチェックする方法がある。使うのは、自分の指だけだ。まず指をできるだけ目から離し、指紋を見る。そして徐々に近づけながら、指紋が初めてくっきりと見えた時の距離を測定する。もしこの距離が16センチ以下であったなら、要注意だ。ただ、16センチより離れていたとしても、合併症の危険がないわけではない。近視であれば、いずれにしても定期的な眼科の検診を受けることがベターなことに変わりはない。
様々な合併症のリスク
WHOが近視を世界的流行と位置づけ、「公衆衛生上の危機」と警鐘を鳴らす理由も、これらの様々な合併症のリスクだ。特に強度近視では、そのリスクが高まる。
つまり、彼らは近視人口が大幅に増加することで、強度近視の人口も比例して増加し、合併症による失明者数も増加してしまうのではないかと危機感を抱いているのだ。
特に近視が進むのは、体の成長が著しい20歳前後まで。発症が早ければ、その分だけ到達する近視の度数も悪化する可能性が高くなる。近視人口、強度近視の割合、合併症による失明者数を減らすためには、早期の対策が必要というのが世界的なコンセンサスなのだ。
予想外の病気と関係も
—後略—
引用:失明する可能性が倍増!? WHOは“近視”を「公衆衛生上の危機」に指定…意外と恐い“強度近視”のチェック法
文春オンライン
たかが近視、されど近視。特に年齢の若い内から、近視の進行を抑制することで強度近視による眼疾患発症のリスクを抑えられるのではないかと言われていますので、オルソケラトロジーも選択肢のひとつになるのではないでしょうか。
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