過去最悪の裸眼視力、子供の近視はどうすれば防げる?
本日は、子どもの裸眼視力低下について記事をご紹介いたします。
過去最悪の裸眼視力、子供の近視はどうすれば防げる?
目は表面の「角膜」から映像を取り入れ、入ってきた平行光線を「水晶体」で屈折してピントを調整し、「網膜」に焦点を合わせてその映像を認識する。近視は「眼球が前後方向に長くなり、目の中に入った光線のピントが合う位置が、網膜より前になっている状態」だ。
新型コロナウイルス感染症拡大で生活が変化し、子供の視力の低下(近視になる子供の増加)が指摘されている。文部科学省が2021年7月28日に公表した、2020年度の学校保健統計調査の結果によれば、裸眼視力が1.0未満の小中学生の割合は過去最悪を更新。その要因の1つとされるのが、テレビやスマートフォン、ゲームなどの視聴時間(スクリーンタイム)増加だ。
国立研究開発法人国立成育医療研究センターが小学生・中学生・高校生を対象に実施した2020年4~5月のアンケート調査(「子どもアンケート調査」)によれば、2020年1月時点と比べ、どの世代も8割程度スクリーンタイム(子供に関しては、勉強時間を除いたテレビやスマートフォン、ゲームなどを見ている時間)が増加。1日当たりのスクリーンタイムが4時間以上の子供の割合は、小学生約3割、中学生・高校生では5割を超えたという(保護者回答)。
オンライン授業の普及など、避けられないデジタル機器の使用もある中、視力低下を防ぐにはどのような生活を送ればいいのか。筑波大学の平岡孝浩准教授に話を聞いた。
子供の近視を増やしている2つの要因
―――― 近視になる子供が増えていると聞きます。子供が近視になりやすい理由は何でしょうか?
近視には「屈折性近視」と「軸性近視」という2つの理論があります。
屈折性近視は、眼球の大きさは正常範囲でありながら、屈折力が強くなるか水晶体が分厚くなることにより、本来焦点が合う網膜より手前にピントが合ってしまう状態のことです。軸性近視は、角膜から網膜までの眼球の長さである眼軸長が、正常よりも前後に長くなり、手前に焦点が合うようになったもの。角膜、水晶体の軸長はほぼ正常なのに、眼軸長が伸びてしまうために近視になる状態です。
学童近視(子供がなる近視)は、ほぼ軸性近視で、眼球が前後にどんどん伸びるためと考えられています。学童期に入る小学校1年生(6歳)くらいから顕著になり、6年生(12歳)くらいまでに進む人が多いのですが、これは身長がぐんと伸びるときに眼球も大きくなるため、軸性近視が出てきやすくなります。
―――― 成長期に軸性近視が出やすいとなると、学童期は最も近視進行が急激に進むと考えられますが、どういった要因が考えられますか。やはりデジタル機器の使用が関係しているのでしょうか。
環境要因と遺伝要因があり、身長同様に遺伝要因が強いのですが、近年は環境要因による近視も増えています。近くを長時間見る「近業」、つまりテレビやゲームを近くで見たり、スマートフォンやタブレット端末、パソコン画面、あるいは本を見ながら作業したりすることが長時間続くと、眼軸長が伸びやすく近視になりやすいことが分かっています。それがコロナ禍で拍車がかかり、世界的に見てスクリーンタイムが長くなっています。さらに近視抑制には屋外活動が重要ということも分かっているのですが、コロナの影響で外での活動が制限されたことも影響していると考えられます。
1日2時間の屋外活動が視力低下を抑制
―――― 近視の進行を抑制する方法はありますか。
屋外活動によって光を浴びることが近視抑制につながることは、以前から指摘されてきました。ただし、長年研究されているものの、理由はまだ明確化されていません。単純に光の照度がいいと考えるグループもいれば、光の中の短めの波長である紫外線と緑の可視光線の両方にかかる波長360~400nmのバイオレットライトが近視の進行抑制になるというグループもいます。あるいは、紫外線により血液中のビタミンDが増加するからいいのではないかというグループもいますし、外に出ると近くではなく遠くを見るため目の調整機能がリラックスできるのでいいというグループもいるなど、現在までのところ定説はありません。
ただし、1日2時間屋外活動を行うと近視になりにくいという疫学調査は世界で多数出てきています。一番有名なのは、…
‐‐‐中略‐‐‐
オルソケラトロジー、多焦点などコンタクトレンズで近視進行抑制
―――― 低濃度アトロピン点眼以外にも、オルソケラトロジーや多焦点コンタクトレンズなども聞きますが、子供でも使用可能なのでしょうか。
オルソケラトロジーという夜装用するコンタクトレンズに関しても、ランダム化比較試験においても効果があることが分かり、日本でも2年、5年、10年をかけた研究をした結果、普通の眼鏡矯正に比べて近視が進まないことが分かりました(※9、10、11)。近視進行抑制のエビデンスレベルが高いと言えます。
また最近は多焦点ソフトコンタクトレンズ(SCL)による近視進行抑制効果の報告も増えてきています(※12、13、14)。通常のコンタクトレンズは1つの度数だけで作られており、普通は遠くにピントが合うように選びます。近くを見るときには水晶体が厚くなったり薄くなったりすることでピント合わせますが、老眼になり水晶体が固くなると調節できず近くが見えなくなりますよね。こうした場合に遠くと近くを見えるように調整する多焦点のレンズ(二重焦点レンズ)を処方するようになりました。
一方子供の場合、近くに焦点を合わせることはできるので必要がないのですが、この多焦点ソフトコンタクトレンズを子供に処方することで、近視が抑制されることが分かりました。
―――― 多焦点=遠近両用と思っていました。コンタクトレンズの作りそのものに特徴があるのでしょうか。
多焦点ソフトコンタクトレンズはデザインも様々で、大きく分けてコンセントリック型(同心円タイプ)とセグメント型があります。このうち近くの度数と遠くの度数が順番に入っているコンセントリック型のソフトコンタクトレンズを装用していると、近視進行抑制があるという研究結果が出ています。これを受けて、アメリカのクーパービジョン社が小児近視進行抑制用コンタクトレンズ「MiSight 1 day」を製造し、まずヨーロッパで承認され、その後米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け販売されるようになりました。日本ではまだ販売はされていませんが、治験が始まりました。
併用で効果も…選び方は好みにもよる
―――― 一度近視になってしまうと、進行は止められないと思っていた親の世代からすると、画期的ですね。
アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズは現在、世界的に近視進行抑制効果のエビデンスが確認され広がっていることからも、注目の「3本柱」と言えると思います。
もっとも最新の研究では、光学的アプローチ…つまりオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼の併用療法が、オルソケラトロジー単独療法よりも眼軸長の伸びを53%抑制したという報告もあります(※15)。
―――― となると、併用療法が主流になっていく可能性もあるのでしょうか。
近視の進行度合いや好みなどにもよりますので、現状ではケースバイケースですね。例えばご両親ともかなり近視が強く遺伝的に近視が進行するだろうと予想される場合、小さいうちから強めの低濃度アトロピン点眼を処方し、それで足りなければオルソケラトロジーも併用するなどは1つの選択だと思います。あるいは、ご両親がそこまで近視が強くないという場合は軽めの低濃度アトロピン点眼を処方する、患者さんの好みで点眼やオルソケラトロジーを選ぶなども方法でしょう。
オルソケラトロジーについては、使い方にも幅があります。寝ているときだけ矯正のためのコンタクトレンズをして、朝は外せるため昼間は裸眼で生活できます。それで学校へ行ってスポーツでも何でも存分に楽しめることを評価して、それ以外は選択しないという人もいます。一方で、夜、装用して眠るのが嫌だという人もいます。
途中で切り替える人もいますし、今のところ、決まったプロトコルはありません。現状ではこうしたものを組み合わせながら、経過観察をしていく形ですね。ただいずれも保険適用外(自由診療)であるため、必ずしも選びやすい選択肢にはなっていません。
強度近視の失明リスクを意識する
―――― 近視の抑制には、屋外活動、スクリーンタイムという生活の見直しでできるところから、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズといった最新の技術を使ったものまであります。改めて注意することはありますでしょうか。
最初に申し上げたように、…
‐‐‐後略‐‐‐
BeyondHealth 健康・医療 Disruptive Innovation
近視の発症率の増加や発症年齢の低下などの傾向は世界中でみられます。
近視は早期発見し、早めに対応することで近視の進行を少しでも遅らせることができると良いですね。
近視の進行を抑制する方法として、オルソケラトロジーは世界的にエビデンスがあり、注目されています。
日本国内でもオルソケラトロジーの需要が高まっていますので、ぜひお試ししてみてはいかがでしょうか。
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